ツリフネソウ(釣舟草)
ツリフネソウ科 ツリフネソウ属
Impatiens textori

  各地の山麓や水辺に生える高さ

 50〜80センチほどの1年草。

 茎は赤みを帯び節がふくらむ。葉

 は互生し5〜15センチの菱状卵

 形で、先は尖り細かい鋸歯がある。

 8〜10月に茎の最上部から3、4

 本の花柄を出し、数個の花を垂れ

 下げる。北海道から九州まで分布。




 日野市内では、黒川清流公園内に湧き出る湧水のほとりに生息し、10

月頃が一番花が盛りになります。

 以前はホウセンカ科と呼ばれていたそうですが、現在はツリフネソウ科

に分類されています。日本在来のツリフネソウ科ツリフネソウ属の植物は、

本種の他にキツリフネとハガクレツリフネ(本州の紀伊半島から九州に分

布)の2種がありますが、一般の方々には、中国南部からインドを原産地

とするホウセンカ(鳳仙花)がお馴染みではないでしょうか。

 花の名前の由来は、細い花柄の先に釣り下がって咲く花の姿を船の形を

した吊り花瓶に見立てたという説と、花の形が帆掛舟に似ているのでつけ

られた、というふたつの説があります。

 花の色は普通掲載写真のように紅紫色ですが、白色のものもあるそうで

す。同属のキツリフネは花の色が黄色で、ハガクレツリフネはツリフネソ

ウと同じ紅紫色ですが、花が葉の下に隠れるようにして咲きます。




 
'97.10.24 上から見ると魚が
  泳いでいるようにも見える


 
完全に開花する前の様子。くるり
と巻いた距の中に甘い蜜がある



 
黒川清流公園の湧水の流れの中や
ほとりに、毎年群生して咲きます




 属名の Impatiens には「こらえきれない」という意味がありまして、こ

の仲間の果実は熟すとちょっと触れただけでも、はじけて種子を飛び散ら

します。それでキツリフネの英名は Touch me not です。


 実はきょう(10/15)黒川清流公園へ花を見に行ったのですが、黒川

清流公園内の2箇所の生息地の内の1箇所のツリフネソウが全て引き抜かれ

ていました。多分東京都の東豊田緑地管理ボランティアの方々が、倒木の処

理と湧き水の流れをつくる作業をされた際に、こうなったのではないかと思

われますが、ここでの作業は、もともと「日野の自然を守る会」で精力的に

活動されていて昨年亡くなられた片岡尤ニさんが、この場所のツリフネソウ

を増やしたいとの思いから、付近一帯に茂り過ぎたセキショウを除去したこ

とに始まったもので、いつの間にか初めの目的が忘れ去られてしまったよう

です。

 花の様子を間近で観察しようと思って出かけたわたしは、とても残念でし

た。(;;)

追伸 '01.11.2 東豊田の緑地ボランティアの方から、

 「黒川清流公園の湧き水池周辺の倒木処理や除草作業は、東京都の委託業

者が作業しました。また前触れもなくやられてしまいました。ボランティア

の皆も、ツリフネソウがなくなったのを残念がっています。」

との連絡を頂きました。ツリフネソウとミゾソバが、すっかりなくなってし

まったのは、東京都多摩環境事務所自然環境課が業者に委託して行なった作

業でそうなったとのことでした。

 東豊田の緑地ボランティアの皆さん、早とちりして申し訳ありませんでし

た。東京都多摩環境事務所自然環境課の担当者の方は、もっと東豊田の貴重

植物のことを勉強して欲しいものです。



※解説文の作成にあたっては、主に山と渓谷社発行のポケット図鑑2、山渓
ハンディ図鑑1・2、小学館 Bookshelf 総合辞典を参考にさせて頂きました。



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